8月27日(金)、「子育ては贅沢で幸せな時間のはず〜子どもがいうことを聞かない、育児が思い通りにならない、それで大丈夫」と題し、医師・臨床心理士の田中茂樹氏のご講演をZoom配信しました。
不登校や引きこもりなど、子育てに起こる問題について20年以上、親のカウンセリングに携わってきた田中氏。多くのケーススタディや、ご自身の4人のお子さんの子育て経験を紹介しながら、「親が導いたり注意しなくても子どもはちゃんと育つ。子育てに正解はないが、親はもっとラクに考えて大丈夫」と提案しました。
その上で「学校に遅刻する」「スマホやゲームとの接し方」「服を家中に脱ぎ散らかす」「子どもにきつくあたってしまう」といったよくある悩みへの対処方法を紹介。たとえば、田中氏のご家庭では野菜嫌いだったお子さんに、最初は食べられる量だけを出すなど、何事も子どもが自分のペースでチャレンジできる環境を大切にしたそうです。田中氏は「甘やかすことと、愛情を注ぐことは違う。子どもに行動を指示して、親自身の思うようになる目的で発する言葉は甘やかしになる」と指摘、「学校や友達関係の中で子どもは否応なしに現実を学ぶ。せめて家は子どもがくつろぐ場所として『小言を言わない』と決めると親自身も子育てが楽しくなってくる」と語りました。先回りして細かく注意したり、他の子と比べることで子どものやる気が奪われていくため、失敗させないのではなく、「失敗しても大丈夫なんだ」という体験を積み重ねることで子どもは安心し、自主性やたくましさ、自己効力感が育まれるのだといいます。
また、田中氏は子育てのトラブルに悩む家庭の傾向として、「〜しなさい、〜したらダメ」といった指示や命令や確認ばかりの「操作的会話」が多いと指摘。「〜が楽しいね、〜はどう思う?」といった「交流的会話」を家庭内に増やすことで親子関係が好転することが多いと伝えました。
「子どもを信じることとは、信じていたら親の思う通りの人間に育つということではなく、どんなに親の望まないことをしても『この子は愛するに値する大切な人間だ』と信じ続けること」と語った田中氏。子育てにおいて大切なのは、表面上のテクニックではなく、子どもが過ごす家庭を居心地のよい場所にして、そのままの子どもを受け入れてあげることだと気付ける、親自身の肩の荷もラクになるような、有意義な時間となりました。
登壇者プロフィール
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田中 茂樹氏(たなか しげき)
医師/臨床心理士
1965年生まれ。高校まで徳島市で育つ。医師・臨床心理士。文学博士(心理学)。共働きで4児を育てる父親。京都大学医学部卒業。京都大学大学院文学研究科博士後期課程(心理学専攻)修了。2010年3月まで仁愛大学人間学部心理学科教授、同大学附属心理臨床センター主任。現在は、奈良県・ 佐保川診療所にて、プライマリ・ケア医として地域医療に従事する。20年以上にわたり、不登校や引きこもりなど子どもの問題について親の相談を受け続けている。著書に『子どもを信じること』(さいはて社)、『 去られるためにそこにいる』(日本評論社)などがある
田中 茂樹氏
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田中 茂樹
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