【イベントレポート】
2月7日(火)出口 保行氏による「犯罪心理学者に聞く 親子の信頼関係を築く方法」と題した講演会をZoom配信いたしました。
出口氏は犯罪心理分析の目的について、犯罪者を更生させるためであると同時に、以下の3つを挙げました。
①(被害に遭わないためという)従来の意味での防犯
②(犯罪を思いとどまらせる)犯罪化させない防犯
③(家庭や学校での教育を通して)犯罪者を作らない防犯
特に家庭生活の中では③の「犯罪者を作らない防犯」を行うことが重要だと強調。
親が「よかれと思って」かけた言葉に子どもの心が追い詰められ、犯罪に至ってしまった数々の事例を紹介。「みんなと仲良く」と言われ続けた結果、自主性が失われたケースや、「早くしなさい」と繰り返され、先を読む力が損なわれたケースなど示しました。
出口氏はそれらに共通するキーワードとして「客観的事実と主観的現実への無関心」を挙げ、詳しく解説しました。親からすれば、暴言も吐いておらず、むしろ「いいことを言った」(客観的事実)と思っていても、子どもからすると「親は何も分かっていない」(主観的現実)と感じることはよくあると言います。大事なのは子どもの主観的現実だとし、子どもがどう受け止めているかに配慮する必要性を伝えました。また、そのときの親子関係によって、子どもには皮肉に聞こえたり、意欲を失わせたりすることもあると述べ、親子関係を歪ませる要因についても説明。親の高圧的な態度は子どもの自己決定能力を低下させ、また、子どもの努力を認めず結果だけを求める態度は、子どもを学習性無力感に陥らせる危険性があるとしました。その上で、親子の信頼関係を構築するためには、プロセスを認め、子どもの行動をよく観察し、短所を長所に置き換えて声かけすることが大切だとしました。
親の期待を重荷に感じて追い込まれ、重罪を犯す事例も増えている現在。出口氏は、最終的に犯行に及んでしまうかどうかの鍵は、捕まる「リスク」と、捕まったときに失う「コスト」の大きさだと語ります。リスクもコストも感じないのがいわゆる「無敵の人」だとし、私たちがコストになる(家族を失いたくないと思わせる)ことがポイントだと話しました。親ならば誰しも「よかれと思って」口にしたことのある、ごく普通の言葉の数々。「呪いの言葉」と化してしまわないよう、親の自己満足になっていないか見直すことが大事だと痛感する、大変貴重な時間となりました。
登壇者プロフィール
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出口 保行氏(でぐち やすゆき)
犯罪心理学者
1985年東京学芸大学大学院教育学研究科発達心理学講座修了と同時に、国家公務員上級心理職として法務省に入省。以後全国の少年鑑別所・刑務所・拘置所で犯罪者を心理学的に分析する資質鑑別に従事。心理分析した犯罪者は1万人を超える。
その他、法務省矯正局、(財)矯正協会附属中央研究所出向、法務省法務大臣官房秘書課国際室勤務等を経て、2007年法務省法務総合研究所研究部室長研究官を最後に退官し、東京未来大学こども心理学部教授に着任。2013年からは同学部長を務める。
内閣府・法務省・警視庁・各都道府県庁・各都道府県️警察本部等の主催する講演会における実績多数。「攻める防犯」という独自の防犯理論を展開。
現在、フジテレビ「全力!脱力タイムズ」にレギュラー出演しているほか、各局報道・情報番組において犯罪解説等を行っている。
出口 保行氏
出口保行氏
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出口 保行
出口保行
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